8.2. Pgpool-II + Watchdogの構築の例

ここでは、ストリーミングレプリケーション構成のPostgreSQLPgpool-IIで管理するシステムの構成例を示します。 この例では、3台のPgpool-IIを使ってPostgreSQLを 管理し、単一障害点やスプリットブレインの起きない堅牢なクラスタを運用することが可能です。

この設定例ではPostgreSQL 14を使っていますが、 各種スクリプトはPostgreSQL 10以降での動作確認を行っています。

8.2.1. 前提条件

Pgpool-IIサーバとPostgreSQLサーバが 同じサブネットにあることを前提とします。

8.2.2. 全体構成

今回は、Linuxサーバを3台用意し、それぞれのホスト名は 「server1」、「server2」、「server3」 とします。 使用するOSはすべてCentOS 7.9とします。 それぞれのサーバにPostgreSQLPgpool-IIをインストールします。 3台のPostgreSQLがストリーミングレプリケーション構成になります。全体構成図は以下の通りです。

図 8-1. 全体構成図

注意: 「アクティブ」「スタンバイ」「Primary」「Standby」といった役割は固定されているものではなく、運用と共に変化することがあります。

表 8-2. ホスト名とIPアドレス

ホスト名IPアドバイス仮想IP
server1192.168.137.101192.168.137.150
server2192.168.137.102
server3192.168.137.103

表 8-3. PostgreSQLのバージョンと設定情報

項目説明
PostgreSQLバージョン14.0-
ポート番号5432-
$PGDATA/var/lib/pgsql/14/data-
アーカイブモード有効/var/lib/pgsql/archivedir
レプリケーションスロット有効-
自動起動有効-

表 8-4. Pgpool-IIのバージョンと設定情報

項目説明
Pgpool-IIバージョン4.3.0-
ポート番号9999Pgpool-IIが接続を受け付けるポート番号
9898PCPプロセスが接続を受け付けるポート番号
9000Watchdogが接続を受け付けるポート番号
9694Watchdogのハートビート信号を受信するUDPポート番号
設定ファイル/etc/pgpool-II/pgpool.confPgpool-IIの設定ファイル
Pgpool-II起動ユーザpostgres (Pgpool-II 4.1以降)Pgpool-II 4.0以前のバージョンでは、デフォルトではrootでPgpool-IIを起動する
Pgpool-II動作モードストリーミングレプリケーションモード-
Watchdog機能有効ハートビート方式
自動起動有効-

表 8-5. RPMに含まれるサンプルスクリプト

機能スクリプト説明
自動フェイルオーバ/etc/pgpool-II/failover.sh.sampleフェイルオーバを実行するスクリプト。failover_commandで使用します。
/etc/pgpool-II/follow_primary.sh.sampleフェイルオーバ後、新しいプライマリサーバとスタンバイサーバを同期させるスクリプト。follow_primary_commandで使用します。
オンラインリカバリ/etc/pgpool-II/recovery_1st_stage.sampleスタンバイサーバをリカバリするスクリプト。recovery_1st_stage_commandで使用します。
/etc/pgpool-II/pgpool_remote_start.samplerecovery_1st_stage_command 後に、スタンバイノードを起動させるスクリプト。
Watchdog/etc/pgpool-II/escalation.sh.sample Pgpool-IIのアクティブ/スタンバイ切り替え時に新アクティブ機以外で起動している 仮想IPを停止するスクリプト。wd_escalation_commandで使用します。

上記各種スクリプトはRPMパッケージに同梱されており、必要に応じてカスタマイズできます。

8.2.3. インストール

すべてのサーバにPostgreSQL 14.0とPgpool-II 4.3をRPMからインストールします。

PostgreSQLのインストールはPostgreSQLコミュニティのリポジトリを使います。

# yum install -y https://download.postgresql.org/pub/repos/yum/reporpms/EL-7-x86_64/pgdg-redhat-repo-latest.noarch.rpm
# yum install -y postgresql14-server
  

Pgpool-IIのインストールはPgpool-II開発 コミュニティが提供するYumリポジトリを用いてインストールします。

# yum install -y https://www.pgpool.net/yum/rpms/4.3/redhat/rhel-7-x86_64/pgpool-II-release-4.3-1.noarch.rpm
# yum install -y pgpool-II-pg14-*
  

8.2.4. 事前設定

Pgpool-IIの設定の前に、以下の設定を行ってください。

8.2.5. pgpool_node_idファイルの作成

Pgpool-II 4.2以降、すべての設定パラメーターがすべてのホストで同一になりました。 Watchdog機能が有効になっている場合、どの設定がどのホストであるかを区別するには、 pgpool_node_idファイルの設定が必要になります。 pgpool_node_idファイルを作成し、 そのファイルにpgpool(watchdog)ホストを識別するためのノード番号(0、1、2など)を追加します。

8.2.6. Pgpool-IIの設定

RPMからインストールした場合、Pgpool-IIの設定ファイル pgpool.conf/etc/pgpool-IIにあります。

Pgpool-II 4.2以降、すべての設定パラメーターがすべてのホストで同一になったので、 どれか一つのノード上でpgpool.confを編集し、 編集したpgpool.confファイルを他のpgpoolノードにコピーすれば良いです。

8.2.6.1. クラスタリングモード

Pgpool-IIにはいくつかのクラスタリングモードがあります。 クラスタリングモードの設定にはbackend_clustering_modeを使用します。 今回の設定例では、ストリーミングレプリケーションモードを設定します。

backend_clustering_mode = 'streaming_replication'
   

8.2.6.2. listen_addresses

Pgpool-IIが全てのIPアドレスから接続を受け付けるように、 listen_addressesパラメータに'*'を設定します。

listen_addresses = '*'
   

8.2.6.3. port

Pgpool-IIが接続を受け付けるために監視するポート番号を指定します。

port = 9999
   

8.2.6.4. ストリーミングレプリケーションのチェック

レプリケーションの遅延チェックユーザsr_check_userpgpoolユーザを設定します。 この設定例では、sr_check_passwordpgpool.confに指定せず、 pool_passwdファイルに作成します。 作成方法については後述の項8.2.6.9を参照ください。 Pgpool-II 4.0から、sr_check_passwordが空白の場合、 Pgpool-IIは空のパスワードを使用する前に まずpool_passwdファイルからsr_check_userに 指定したユーザのパスワードを取得できるか試みます。

sr_check_user = 'pgpool'
sr_check_password = ''
   

8.2.6.5. ヘルスチェック

自動フェイルオーバのため、ヘルスチェックを有効にします。 health_check_periodのデフォルト値が0で、これはヘルスチェックが無効であることを意味します。 また、ネットワークが不安定な場合には、バックエンドが正常であるにも関わらず、 ヘルスチェックに失敗し、フェイルオーバや縮退運転が発生してしまう可能性があります。 そのようなヘルスチェックの誤検知を防止するため、ヘルスチェックのリトライ回数を health_check_max_retries = 3 に設定しておきます。 health_check_userhealth_check_passwordは 前述のsr_check_usersr_check_passwordと同様に設定します。

health_check_period = 5
health_check_timeout = 30
health_check_user = 'pgpool'
health_check_password = ''
health_check_max_retries = 3
   

8.2.6.6. バックエンドの設定

また、バックエンド情報を前述のserver1server2 及びserver3の設定に従って設定しておきます。 複数バックエンドノードを定義する場合、以下のbackend_*などのパラメータ名の 末尾にノードIDを表す数字を付加することで複数のバックエンドを指定することができます。

# - Backend Connection Settings -

backend_hostname0 = 'server1'
backend_port0 = 5432
backend_weight0 = 1
backend_data_directory0 = '/var/lib/pgsql/14/data'
backend_flag0 = 'ALLOW_TO_FAILOVER'

backend_hostname1 = 'server2'
backend_port1 = 5432
backend_weight1 = 1
backend_data_directory1 = '/var/lib/pgsql/14/data'
backend_flag1 = 'ALLOW_TO_FAILOVER'

backend_hostname2 = 'server3'
backend_port2 = 5432
backend_weight2 = 1
backend_data_directory2 = '/var/lib/pgsql/14/data'
backend_flag2 = 'ALLOW_TO_FAILOVER'
   

SHOW POOL_NODESコマンドでPgpool-II 4.1で追加された replication_statカラムとreplication_sync_stateカラムを表示するには、 backend_application_nameパラメータを設定する必要があります。 ここではそれぞれのホスト名を設定します。

...
backend_application_name0 = 'server1'
...
backend_application_name1 = 'server2'
...
backend_application_name2 = 'server3'
      

8.2.6.7. フェイルオーバの設定

PostgreSQLバックエンドノードがダウンした時に実行するスクリプトを failover_commandに設定します。 また、PostgreSQLサーバが3台の場合、 プライマリノードのフェイルオーバ後に新しいプライマリからスタンバイをリカバリするために follow_primary_commandも設定する必要があります。 follow_primary_commandはプライマリノードのフェイルオーバ後に実行されます。 PostgreSQLサーバが2台の場合、follow_primary_commandの設定は不要です。

それぞれの実行スクリプトの引数は、それぞれ実行時にPgpool-II によってバックエンドの具体的な情報に置き換えられます。 各引数の意味はfailover_commandをご参照ください。

failover_command = '/etc/pgpool-II/failover.sh %d %h %p %D %m %H %M %P %r %R %N %S'
follow_primary_command = '/etc/pgpool-II/follow_primary.sh %d %h %p %D %m %H %M %P %r %R'
   

注意: %N%SPgpool-II 4.1で追加された引数です。 Pgpool-II 4.0または以前のバージョンを利用している場合、 これらの引数を指定できないので、ご注意ください。

サンプルスクリプトfailover.sh及び follow_primary.sh/etc/pgpool-II/配下にインストールされていますので、これらのファイルをコピーして作成します。

[全サーバ]# cp -p /etc/pgpool-II/failover.sh{.sample,}
[全サーバ]# cp -p /etc/pgpool-II/follow_primary.sh{.sample,}
[全サーバ]# chown postgres:postgres /etc/pgpool-II/{failover.sh,follow_primary.sh}
   

基本的にはPGHOMEを環境に合わせて変更すれば、動作します。

[全サーバ]# vi /etc/pgpool-II/failover.sh
...
PGHOME=/usr/pgsql-14
...

[全サーバ]# vi /etc/pgpool-II/follow_primary.sh
...
PGHOME=/usr/pgsql-14
...
   

PCPコマンドを使用するにはユーザ認証が必要になるので、 ユーザ名とmd5ハッシュに変換されたパスワードを "username:encrypted password"の形式で pcp.confファイルに設定します。

follow_primary.shpgpoolユーザが PCP_USERに指定されている場合、

# cat /etc/pgpool-II/follow_primary.sh
...
PCP_USER=pgpool
...
   

以下のようにpg_md5コマンドを利用し、 ハッシュ化されたpgpoolユーザのパスワードエントリを/etc/pgpool-II/pcp.confに追加します。

[全サーバ]# echo 'pgpool:'`pg_md5 PCPコマンドパスワード` >> /etc/pgpool-II/pcp.conf
   

前述のfollow_primary.shのスクリプトでパスワード入力なしで PCPコマンドを実行できるように、すべてのサーバで Pgpool-IIの起動ユーザのホームディレクトリに.pcppassを作成します。

[全サーバ]# su - postgres
[全サーバ]$ echo 'localhost:9898:pgpool:<pgpool user password>' > ~/.pcppass
[全サーバ]$ chmod 600 ~/.pcppass
   

注意: follow_primary.shスクリプトはテーブルスペースに対応していません。 テーブルスペースを使っている場合は、スクリプトを自分で変更する必要があります。

8.2.6.8. オンラインリカバリの設定

続いて、オンラインリカバリを行うためのPostgreSQLのユーザ名 及びオンラインリカバリ時に呼び出されるコマンドrecovery_1st_stageを設定します。 オンラインリカバリで実行されるpgpool_recovery関数は PostgreSQLのスーパーユーザ権限が必要なため、 recovery_userスーパーユーザを指定しなければなりません。 ここでは、postrgesユーザを指定します。

recovery_user = 'postgres'
recovery_password = ''

recovery_1st_stage_command = 'recovery_1st_stage'
   

オンラインリカバリ用のサンプルスクリプトrecovery_1st_stage 及びpgpool_remote_start/etc/pgpool-II/配下にインストールされていますので、 これらのファイルをプライマリサーバ(server1)のデータベースクラスタ配下に配置します。

[server1]# cp -p /etc/pgpool-II/recovery_1st_stage.sample /var/lib/pgsql/14/data/recovery_1st_stage
[server1]# cp -p /etc/pgpool-II/pgpool_remote_start.sample /var/lib/pgsql/14/data/pgpool_remote_start
[server1]# chown postgres:postgres /var/lib/pgsql/14/data/{recovery_1st_stage,pgpool_remote_start}
   

基本的にはPGHOMEを環境に合わせて変更すれば、動作します。

[server1]# vi /var/lib/pgsql/14/data/recovery_1st_stage
...
PGHOME=/usr/pgsql-14
...

[server1]# vi /var/lib/pgsql/14/data/pgpool_remote_start
...
PGHOME=/usr/pgsql-14
...
   

また、オンラインリカバリ機能を使用するには、pgpool_recoverypgpool_remote_startpgpool_switch_xlogという関数が必要になるので、 server1のtemplate1にpgpool_recoveryをインストールしておきます。

[server1]# su - postgres
[server1]$ psql template1 -c "CREATE EXTENSION pgpool_recovery"
   

注意: recovery_1st_stageスクリプトはテーブルスペースに対応していません。 テーブルスペースを使っている場合は、スクリプトを自分で変更する必要があります。

8.2.6.9. クライアント認証の設定

事前設定の章で、 Pgpool-IIPostgreSQLの間に 認証方式をscram-sha-256に設定しました。 この設定例では、クライアントとPgpool-IIの間でも scram-sha-256認証方式を利用し接続するように設定します。 Pgpool-IIのクライアント認証の設定ファイルは pool_hba.confと呼ばれ、RPMパッケージからインストールする場合、 デフォルトでは/etc/pgpool-II配下にインストールされます。 デフォルトではpool_hba.confによる認証は無効になっているので、 pgpool.confでは以下の設定をonに変更します。

enable_pool_hba = on
   

pool_hba.confのフォーマットはPostgreSQLpg_hba.confとほとんど同じです。 pgpoolpostgresユーザをscram-sha-256認証に設定します。

host    all         pgpool           0.0.0.0/0          scram-sha-256
host    all         postgres         0.0.0.0/0          scram-sha-256
   

注意: Pgpool-II 4.0の場合、pgpool.confファイル内の health_check_passwordsr_check_passwordwd_lifecheck_passwordrecovery_passwordには AES256暗号化形式、平文形式しか指定できないので、ご注意ください。

Pgpool-IIのクライアント認証で用いるデフォルトの パスワードファイル名はpool_passwdです。 scram-sha-256認証を利用する場合、 Pgpool-IIはそれらのパスワードを復号化するために復号鍵が必要となります。 全サーバで復号鍵ファイルをPgpool-IIの起動ユーザ postgres (Pgpool-II 4.0以前のバージョンでは root) のホームディレクトリ配下に作成します。

[全サーバ]# su - postgres
[全サーバ]$ echo '任意の文字列' > ~/.pgpoolkey 
[全サーバ]$ chmod 600 ~/.pgpoolkey
   

pg_enc -m -k /path/to/.pgpoolkey -u username -p」を実行すると、 ユーザ名とAES256で暗号化したパスワードのエントリがpool_passwdに登録されます。 pool_passwd がまだ存在しなければ、pgpool.confと同じディレクトリ内に作成されます。

[全サーバ]# su - postgres
[全サーバ]$ pg_enc -m -k ~/.pgpoolkey -u pgpool -p
db password: [pgpoolユーザのパスワード]
[全サーバ]$ pg_enc -m -k ~/.pgpoolkey -u postgres -p
db password: [postgresユーザのパスワード]

# cat /etc/pgpool-II/pool_passwd 
pgpool:AESheq2ZMZjynddMWk5sKP/Rw==
postgres:AESHs/pWL5rtXy2IwuzroHfqg==
   

8.2.6.10. Watchdogの設定

デフォルトではWatchdog機能が無効のため、 Watchdogを有効にします。

use_watchdog = on
   

アクティブ機が立ち上げる仮想IPをdelegate_IPに指定します。 仮想IPはまだ使われていないIPアドレスを指定してください。

delegate_IP = '192.168.137.150'
   

仮想IPの起動/停止、ARPリクエストの送信を行う設定パラメータ if_up_cmdif_down_cmdarping_cmdに、 ネットワーク環境に合わせてネットワークインターフェース名を設定します。 今回の例で使ったネットワークインターフェースは「enp0s8」となっています。 if_up/down_cmdarping_cmdを実行するにはroot権限が必要となりますので、 一般ユーザが実行できるようにip/arpingコマンドにsetuidを設定するか、 Pgpool-II起動ユーザ、 デフォルトではpostgresユーザ (Pgpool-II 4.1以降) が パスワードなしにsudoを実行できるように設定する必要があります。

注意: RPMからインストールした場合、postgresユーザがパスワードなしに sudoを介してip/arpingを実行できるように設定済みです。

postgres ALL=NOPASSWD: /sbin/ip
postgres ALL=NOPASSWD: /usr/sbin/arping
     

ここでは、sudoを介して実行するように設定します。

if_up_cmd = '/usr/bin/sudo /sbin/ip addr add $_IP_$/24 dev enp0s8 label enp0s8:0'
if_down_cmd = '/usr/bin/sudo /sbin/ip addr del $_IP_$/24 dev enp0s8'
arping_cmd = '/usr/bin/sudo /usr/sbin/arping -U $_IP_$ -w 1 -I enp0s8'
    

注意: /etc/sudoersで「Defaults requiretty」を設定している場合は、 Pgpool-IIの起動ユーザがttyなしで if_up_cmdif_down_cmd 及びarping_cmdコマンドを実行できるように設定する必要があります。

ipコマンドやarpingコマンドのパスがデフォルトのパスと異なる場合、 環境に合わせてif_cmd_patharping_pathを設定しておいてください。 ただし、if_up/down_cmd及びarping_cmdに指定したコマンドが"/"で始まる場合、 フルパスとみなしif_cmd_path及びarping_pathの設定を無視します。

if_cmd_path = '/sbin'
arping_path = '/usr/sbin'
   

Watchdogが稼働するサーバ情報を設定しておきます。 pgpool_portXには項8.2.6.3portに設定されているポート番号を指定します。

hostname0 = 'server1'
wd_port0 = 9000
pgpool_port0 = 9999

hostname1 = 'server2'
wd_port1 = 9000
pgpool_port1 = 9999

hostname2 = 'server3'
wd_port2 = 9000
pgpool_port2 = 9999
   

Watchdog死活監視の設定では、 死活監視の方法を指定するwd_lifecheck_method、 監視間隔(秒)を指定するwd_intervalを設定します。 この設定例では、死活監視の方法はhearbeatを用います。

wd_lifecheck_method = 'heartbeat'
                                    # Method of watchdog lifecheck ('heartbeat' or 'query' or 'external')
                                    # (change requires restart)
wd_interval = 10
                                    # lifecheck interval (sec) > 0
                                    # (change requires restart)
   

wd_lifecheck_methodheartbeatに設定されている場合、 heartbeat通信用の各Pgpool-IIサーバ情報を設定しておきます。

heartbeat_hostname0 = 'server1'
                                    # Host name or IP address used
                                    # for sending heartbeat signal.
                                    # (change requires restart)
heartbeat_port0 = 9694
                                    # Port number used for receiving/sending heartbeat signal
                                    # Usually this is the same as heartbeat_portX.
                                    # (change requires restart)
heartbeat_device0 = ''
                                    # Name of NIC device (such like 'eth0')
                                    # used for sending/receiving heartbeat
                                    # signal to/from destination 0.
                                    # This works only when this is not empty
                                    # and pgpool has root privilege.
                                    # (change requires restart)

heartbeat_hostname1 = 'server2'
heartbeat_port1 = 9694
heartbeat_device1 = ''
heartbeat_hostname2 = 'server3'
heartbeat_port2 = 9694
heartbeat_device2 = ''
   

wd_lifecheck_methodheartbeatに設定されている場合、 障害と判断する秒数を指定するwd_heartbeat_deadtime、 ハートビート信号の送信間隔(秒)を指定するwd_heartbeat_keepaliveを設定します。

wd_heartbeat_keepalive = 2
                                    # Interval time of sending heartbeat signal (sec)
                                    # (change requires restart)
wd_heartbeat_deadtime = 30
                                    # Deadtime interval for heartbeat signal (sec)
                                    # (change requires restart)
   

Watchdogプロセスが異常終了した場合に、 旧アクティブ機に仮想IPが残ったまま、新アクティブ機で同じ仮想IPを起動してしまう可能性があります。 それを防ぐためにwd_escalation_commandに、新アクティブ機以外の Pgpool-IIノードの仮想IPを停止させるスクリプトを設定します。

wd_escalation_command = '/etc/pgpool-II/escalation.sh'
                                    # Executes this command at escalation on new active pgpool.
                                    # (change requires restart)
    

サンプルスクリプトescalation.sh/etc/pgpool-II/配下にインストールされています。

[全サーバ]# cp -p /etc/pgpool-II/escalation.sh{.sample,}
[全サーバ]# chown postgres:postgres /etc/pgpool-II/escalation.sh
    

サーバのホスト名、仮想IP、仮想IPを設定するネットワークインターフェース名を環境に合わせて変更してください。

[全サーバ]# vi /etc/pgpool-II/escalation.sh
...
PGPOOLS=(server1 server2 server3)
VIP=192.168.137.150
DEVICE=enp0s8
...
   

注意: Watchdogノードの数が偶数の場合は、 enable_consensus_with_half_votesパラメータをonにする必要があります。

注意: use_watchdog = onの場合は、Pgpool-IIノード番号を pgpool_node_idに設定する必要yu-があります。 詳細は項8.2.5を参照ください。

8.2.6.11. ログの設定

Pgpool-II 4.2以降、ログ収集プロセスが追加されました。 ここでは、ログ収集プロセス(logging_collector)を有効にします。

log_destination = 'stderr'
logging_collector = on
log_directory = '/var/log/pgpool_log'
log_filename = 'pgpool-%Y-%m-%d_%H%M%S.log'
log_truncate_on_rotation = on
log_rotation_age = 1d
log_rotation_size = 10MB
   

すべてのサーバでログファイルを格納するディレクトリを作成します。

[全サーバ]# mkdir /var/log/pgpool_log/
[全サーバ]# chown postgres:postgres /var/log/pgpool_log/
   

ここで、server1pgpool.confの設定は完了です。 server1pgpool.confを 他のノード(server2server3)にコピーします。

[server1]# scp -p /etc/pgpool-II/pgpool.conf root@server2:/etc/pgpool-II/pgpool.conf
[server1]# scp -p /etc/pgpool-II/pgpool.conf root@server3:/etc/pgpool-II/pgpool.conf
   

8.2.7. /etc/sysconfig/pgpoolの設定

Pgpool-II起動時にpgpool_statusファイルが存在する場合、 Pgpool-IIpgpool_statusファイルから バックエンドの状態(up/down)を読み取ります。 Pgpool-II起動時にpgpool_statusファイルを無視させたい場合、 /etc/sysconfig/pgpoolの起動オプションOPTSに「-D」を追加します。

[全サーバ]# vi /etc/sysconfig/pgpool
(...省略...)
OPTS=" -D -n"
  

8.2.8. システムの起動と停止

Pgpool-IIの設定が完了したら、 次にPgpool-IIを起動します。 Pgpool-IIを起動する前に、 バックエンドのPostgreSQLをあらかじめ起動する必要があります。 また、PostgreSQLを停止する場合、 Pgpool-IIを先に停止する必要があります。

8.2.9. 動作確認

これから、動作確認を行います。 まず、server1server2server3で 以下のコマンドでPgpool-IIを起動します。

# systemctl start pgpool.service
  

8.2.9.1. PostgreSQL スタンバイサーバを構築

まず、Pgpool-IIのオンラインリカバリ機能を利用し、スタンバイサーバを構築します。 pcp_recovery_nodeコマンドで実行されるrecovery_1st_stage_command パラメータに指定したrecovery_1st_stagepgpool_remote_start スプリクトが実行されるので、この2つのスクリプトが現在稼働中のプライマリサーバserver1の データベースクラスタの下に存在することを確認します。

# pcp_recovery_node -h 192.168.137.150 -p 9898 -U pgpool -n 1
Password:
pcp_recovery_node -- Command Successful

# pcp_recovery_node -h 192.168.137.150 -p 9898 -U pgpool -n 2
Password:
pcp_recovery_node -- Command Successful
   

server2server3PostgreSQLが スタンバイとして起動されていることを確認します。

# psql -h 192.168.137.150 -p 9999 -U pgpool postgres -c "show pool_nodes"
Password for user pgpool:
 node_id | hostname | port | status | pg_status | lb_weight |  role   | pg_role | select_cnt | load_balance_node | replication_delay | replication_state | replication_sync_state | last_status_change
---------+----------+------+--------+-----------+-----------+---------+---------+------------+-------------------+-------------------+-------------------+------------------------+---------------------
 0       | server1  | 5432 | up     | up        | 0.333333  | primary | primary | 0          | false             | 0                 |                   |                        | 2021-10-19 07:00:57
 1       | server2  | 5432 | up     | up        | 0.333333  | standby | standby | 0          | true              | 0                 | streaming         | async                  | 2021-10-19 07:00:57
 2       | server3  | 5432 | up     | up        | 0.333333  | standby | standby | 0          | false             | 0                 | streaming         | async                  | 2021-10-19 07:00:57
(3 rows)
   

8.2.9.2. Watchdogアクティブ/スタンバイの切り替え

pcp_watchdog_infoPgpool-IIWatchdogの情報を確認します。 最初に起動したPgpool-IIが「LEADER」になります。

# pcp_watchdog_info -h 192.168.137.150 -p 9898 -U pgpool
Password:
3 YES server1:9999 Linux server1 server1

server1:9999 Linux server1 server1 9999 9000 4 LEADER  #最初に起動されたサーバがLEADERになる
server2:9999 Linux server2 server2 9999 9000 7 STANDBY #スタンバイとして稼働
server3:9999 Linux server3 server3 9999 9000 7 STANDBY #スタンバイとして稼働
   

アクティブであるserver1Pgpool-II を停止し、server2またはserver3が スタンバイからアクティブに昇格することを確認します。 server1を停止する方法はPgpool-IIを停止する、 またはマシンをシャットダウンします。ここでは、Pgpool-IIを停止します。

[server1]# systemctl stop pgpool.service

# pcp_watchdog_info -p 9898 -h 192.168.137.150 -U pgpool
Password:
3 YES server2:9999 Linux server2 server2

server2:9999 Linux server2 server2 9999 9000 4 LEADER     #server2がアクティブに昇格
server1:9999 Linux server1 server1 9999 9000 10 SHUTDOWN  #server1が停止された
server3:9999 Linux server3 server3 9999 9000 7 STANDBY    #スタンバイとして稼働
   

先ほど停止したPgpool-IIを再起動し、スタンバイとして起動したことを確認します。

[server1]# systemctl start pgpool.service

[server1]# pcp_watchdog_info -p 9898 -h 192.168.137.150 -U pgpool
Password:
3 YES server2:9999 Linux server2 server2

server2:9999 Linux server2 server2 9999 9000 4 LEADER
server1:9999 Linux server1 server1 9999 9000 7 STANDBY
server3:9999 Linux server3 server3 9999 9000 7 STANDBY
   

8.2.9.3. 自動フェイルオーバ

psqlで仮想IPに接続し、バックエンドの情報を確認します。

# psql -h 192.168.137.150 -p 9999 -U pgpool postgres -c "show pool_nodes"
Password for user pgpool:
 node_id | hostname | port | status | pg_status | lb_weight |  role   | pg_role | select_cnt | load_balance_node | replication_delay | replication_state | replication_sync_state | last_status_change
---------+----------+------+--------+-----------+-----------+---------+---------+------------+-------------------+-------------------+-------------------+------------------------+---------------------
 0       | server1  | 5432 | up     | up        | 0.333333  | primary | primary | 0          | false             | 0                 |                   |                        | 2021-10-19 07:08:14
 1       | server2  | 5432 | up     | up        | 0.333333  | standby | standby | 0          | false             | 0                 | streaming         | async                  | 2021-10-19 07:08:14
 2       | server3  | 5432 | up     | up        | 0.333333  | standby | standby | 0          | true              | 0                 | streaming         | async                  | 2021-10-19 07:08:14
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次にプライマリであるserver1PostgreSQLを停止し、 フェイルオーバするかどうか確認してみます。

[server1]$ pg_ctl -D /var/lib/pgsql/14/data -m immediate stop
   

ノード1を停止後、フェイルオーバが発生し、server2が プライマリに昇格したことを確認します。

# psql -h 192.168.137.150 -p 9999 -U pgpool postgres -c "show pool_nodes"
Password for user pgpool:
 node_id | hostname | port | status | pg_status | lb_weight |  role   | pg_role | select_cnt | load_balance_node | replication_delay | replication_state | replication_sync_state | last_status_change
---------+----------+------+--------+-----------+-----------+---------+---------+------------+-------------------+-------------------+-------------------+------------------------+---------------------
 0       | server1  | 5432 | down   | down      | 0.333333  | standby | unknown | 0          | false             | 0                 |                   |                        | 2021-10-19 07:10:01
 1       | server2  | 5432 | up     | up        | 0.333333  | primary | primary | 0          | false             | 0                 |                   |                        | 2021-10-19 07:10:01
 2       | server3  | 5432 | up     | up        | 0.333333  | standby | standby | 0          | true              | 0                 | streaming         | async                  | 2021-10-19 07:10:03
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server3が新しいプライマリserver2のスタンバイとして起動されています。

[server3]# psql -h server3 -p 5432 -U pgpool postgres -c "select pg_is_in_recovery()"
pg_is_in_recovery 
-------------------
t

[server2]# psql -h server2 -p 5432 -U pgpool postgres -c "select pg_is_in_recovery()"
pg_is_in_recovery 
-------------------
f

[server2]# psql -h server2 -p 5432 -U pgpool postgres -c "select * from pg_stat_replication" -x
-[ RECORD 1 ]----+------------------------------
pid              | 7198
usesysid         | 16385
usename          | repl
application_name | server3
client_addr      | 192.168.137.103
client_hostname  |
client_port      | 40916
backend_start    | 2021-10-19 07:10:03.067241+00
backend_xmin     |
state            | streaming
sent_lsn         | 0/12000260
write_lsn        | 0/12000260
flush_lsn        | 0/12000260
replay_lsn       | 0/12000260
write_lag        |
flush_lag        |
replay_lag       |
sync_priority    | 0
sync_state       | async
reply_time       | 2021-10-19 07:11:53.886477+00
   

8.2.9.4. オンラインリカバリ

次に、Pgpool-IIのオンラインリカバリ機能を利用し、 先ほど停止した旧プライマリサーバをスタンバイとして復旧させます。 pcp_recovery_nodeコマンドで実行されるrecovery_1st_stage_command パラメータに指定したrecovery_1st_stagepgpool_remote_startスプリクトが 現在稼働中のプライマリサーバserver2のデータベースクラスタの下に存在することを確認します。

# pcp_recovery_node -h 192.168.137.150 -p 9898 -U pgpool -n 0
Password:
pcp_recovery_node -- Command Successful
   

ノード1がスタンバイとして起動されたことを確認します。

# psql -h 192.168.137.150 -p 9999 -U pgpool postgres -c "show pool_nodes"
Password for user pgpool:
 node_id | hostname | port | status | pg_status | lb_weight |  role   | pg_role | select_cnt | load_balance_node | replication_delay | replication_state | replication_sync_state | last_status_change
---------+----------+------+--------+-----------+-----------+---------+---------+------------+-------------------+-------------------+-------------------+------------------------+---------------------
 0       | server1  | 5432 | up     | up        | 0.333333  | standby | standby | 0          | true              | 0                 | streaming         | async                  | 2021-10-19 07:14:06
 1       | server2  | 5432 | up     | up        | 0.333333  | primary | primary | 0          | false             | 0                 |                   |                        | 2021-10-19 07:10:01
 2       | server3  | 5432 | up     | up        | 0.333333  | standby | standby | 0          | false             | 0                 | streaming         | async                  | 2021-10-19 07:10:03
(3 rows)
   

以上で、動作確認が完了です。